AudioHaptics

Fig.1 HapticMasterとスピーカー

Fig.2 システム構成図


私達は普段,足音や車の音などから人や車の移動状態を知ったり,音の反響で建物などの大きさを感じたり,会話によって情報伝達をおこなったりと,目から入ってくる視覚情報だけではなくさまざまな聴覚情報を利用して生活している.VR(Virtual Reality)空間においても音は視覚情報を補い,臨場感を作り出すための欠かせない要素である. すでに3次元音場の生成技術は建築,都市設計やゲームやカラオケなどのアミューズメントなどさまざまな分野で使われており,リアルタイムの3次元音場生成の研究も進められている.

ところで,私達は音源から単に聞こえてくる音だけでなく,物体とのインタラクションの結果生じた音を積極的に利用して世界を認識している. 物の素材がプラスティックなのか金属なのかを知るためにそれをたたいて音を聞く.壁や物をたたいて空洞があるかなど内部構造を把握しようとするなど,よい例である.このような物体とのインタラクションの結果生じる音の呈示は,VR空間での臨場感の向上に重要な要素といえる.

しかしながら,現在の3次元音場生成システムでは,実物体から実際に放射された音を録音し,周囲の環境に応じた効果を加えるなどしてそれを再生する場合が多い.このようなシステムではサンプリング音が用意されていない物体の音の呈示は困難である.さらに,音場そのものについても,インタラクションが頻繁に起こるユーザの手元の音源定位を固定のスピーカによっておこなうことは難しい.

そこで本研究では,バーチャルな物体とのインタラクションの結果生じる音を,物理法則に基づいて計算することで,任意の形状,物性の物体からの聴覚と力覚情報を呈示する手法を提案する.具体的にはバーチャルな物体とのインタラクションに力覚デバイスを用い,物理法則計算の手法として有限要素法により変形および振動を計算し,物体の微小振動によって発生する音を計算する.その音を力覚デバイスの効果器に取り付けた小型スピーカで再生することで,ユーザの手元のバーチャルな物体からの音を発生させたのと同等の効果を作り出している.


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VRSJ5-3.pdf