HapticMaster

Haptic Master は、デスクトップフォースディスプレイのことです。

力覚は、仮想物体の認識に重要な役割を果たします。フォースディスプレイを用いることで、仮想物体の硬さや重さを表現することができます

Haptic Master は、6自由度のマニピュレータで、操作者の手先に反力を提示するためにパラレルメカニズムを採用しています。さらに、机で使用できるような大きさになっています。なお、マニピュレータの効果器は、3つのパンタグラフ機構によって支持されています。 

今日のロボットマニピュレータの多くは、大型で高価なハードウエアになっています。このことは、人間とコンピュータがインタラクションするようなアプリケーションの開発の妨げになっています。 Haptic Master は、卓上型で、手先の位置、姿勢を計測でき、手先に反力を提示できるようになっています。これにより、サイエンティフィックビジュアライゼーションや3次元形状モデリングなど人工現実感の主要なアプリケーションにおいて効果を表します。

ところで、パラレルマニピュレータの典型的な構造は、スチュワートプラットホームと呼ばれる8面体構造をしています。スチュワートプラットホームは、頭部三角形が6つの、長さを調節できる直動シリンダによって支えられています。このようにすることで、小型で、そのわりに高出力なマニピュレータを作ることができます。しかし、この機構では、可動範囲が小さくなり、バックドライバビリティー(頭部三角形の運動の可逆性)が欠如する(シリンダの摩擦が大きく、頭部三角形を外部からの力で動かすことが難しくなる。)という欠点があります。

Haptic master は、3つのパンタグラフを直動アクチュエータの代わりに用いています。それぞれのパンタグラフは、3つのDCモータが取り付けられておりPWM(パルス幅変調方式)によりトルクの制御が行なわれています。全体で9つのモータが使われており冗長駆動になっています。 パンタグラフの先端は、頭部三角形の頂点に立体角の大きな球面継ぎ手を介して取り付けられています。このパンタグラフを用いた機構は、8面体構造と等価であり、尚且つ可動範囲とバックドライバビリティの問題を解決します。さらに、マニピュレータの可動部分の慣性が小さいので、補償の必要もなくなっています。

可動範囲は、直径40cmの球形で、各関節に取り付けたポテンショメータにより関節角を計測し、手先の位置姿勢を同次変換により求めることができるようになっています。また、最大反力は、700kgf以上になっています。

Haptic Master は、任意の方向、大きさの反力を提示できます。このコンパクトな機構で、操作者は、下記のような3種類の仮想物体の物理特性を知覚できます。

1.硬い表面

仮想の表面の法線方向の反力を、操作者の手に提示することで実現します。ユーザーは、その表面を簡単にはつき抜けることはできないようになっています。

2.弾性のある表面

操作者は、表面を押したり、変形したりすることができます。反力は、変形量に比例して増加します。このような反力は、3次元形状モデリングなどで効果を発揮します。

3.流れ

操作者が流れの中に手を入れると、流体から抵抗力を受け、渦に入ればねじられるような力を感じます。そこで、流速を力で、渦はトルクによって表現します。このような反力は、サイエンティフィックビジュアライゼーション等で効果を発揮します。