旋回式高解像度実画像ディスプレイ
図1 全体図
図2 撮像系
人間が空間を認識するうえで、"自らの足で歩く"という行為は非常に重要です。その中でも特に、"自分の足で体を回転させて、視覚情報の変化を得る"ということは、必要不可欠であると考えれらています。
そのような観点から、本研究室ではこれまで、TorusTreadmillや GaitMaster といった"ロコモーションインタフェース"が開発されてきました。
本装置は、そのような"全方向に対応したロコモーションインタフェースと組み合わせることを前提とした、広視野高解像度実画像ディスプレイです。人間の回転運動に対応し、かつ広視野高解像度な実画像呈示を実現するために、本装置では、9台のカメラと9台のプロジェクタを用いた没入型実画像ディスプレイを、人間の周囲を旋回するターンテーブル上に設置するという方式をとっています。
本装置のディスプレイ部分がNONA-VisionとしてSIGGRAPH2002に出展されました。これはスクリーンを手で旋回させると、離れた所にあるカメラが同期して動き360度眺めることができるものです。
NONA-Vision
Fig1.9枚の背面投射で構成されるスクリーン
プロジェクトの目的
視覚的に没入するということはバーチャル環境及びテレプレゼンスにおいて重要な要素です。そのための広視野角をカバーすることができる大きなスク リーンは膨大な画素を必要とします。現在、プロジェクターは高い解像度を持っており、またグラフィックワークステーションもリアルタイムでの高いCG描画 能力を持っていますが、現実世界ほどの高解像度の再現はまだ困難です。HDTVカメラはビデオイメージとしては最高の解像度ではありますが、人間 の全視野を覆うには十分ではありません。さらに。HDTVの無線送信は一般的なものではありません。
このNONA-Visionは遠隔地の環境を特別な多数のカメラを使用することで高解像度を実現することを目的としています。
本プロジェクトでの技術的革新
NONA-Vision は高解像度、広画角のビデオキャプチャ及びプロジェクション システムです。このディスプレイは9枚の背面投射型スクリーンで構成されていま す。9枚のスクリーンの映像は9台のビデオカメラによってキャプチャされます。各カメラの光学中心位置を一つにするために8枚の鏡を使用しています。この配 置により補正をすることなしにスクリーンに出力する映像が得られます。 それぞれのカメラの映像はUHF送信機によって送信されます。
このディスプレイは360度の旋回機構を有しています。使用者の回転運動は位置センサーで計測され、使用者の向きにしたがってディスプレイが旋回しま す。したがって使用者は全周囲を覆う映像を見ることが可能となります。
将来の応用
NONA-Visionの応用の可能性として、テレオペレーションやバーチャル旅行などが挙げられます。広画角映像はロボットの遠隔操作を容易にします。見知らぬ環境では、通常のカメラによる狭い視野だと把握しづらいものですが、NONA-Visionでは遠隔地での優れた臨場感を提供することができます。
Fig2.9台のカメラで構成されるカメラヘッド
Fig3.9台のカメラの光学中心